2009年 03月 25日
『尾張名所図会』の築地楼上の遊興 築地楼上の遊興 宮の遊里は神戸、伝馬、築出の3カ所あった。神戸、伝馬、築出の順番にランクがあった。特に一番ランクの高い神戸の中でも鯛屋、永楽屋、駿河屋は三大妓楼と呼ばれ、江戸末期の文化2年(1805)頃には江戸、京、大坂までその名が知られていた。 『史跡 あつた』より 当時、三大妓楼があった神戸を望む
by nitibotuM
| 2009-03-25 20:28
| 尾張名所図会
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Comments(8)
大変楽しく拝読しております。
ひとつ質問させて下さい。 「つきだしの…」で始まるこの短歌についてですが、 料理の最初に出てくるいわゆるお通しの「突き出し」だと理解しておりました。 「築出」という町の名前なのでしょうか?
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nitibotuM at 2019-07-30 21:05
コメントありがとうございます。
「つき出し」についてですが、分かる範囲で少し考えてみたいと思います。 まず、挿絵にある「築地」とは神戸町の海側の地域を指しているようです。この「築地」ですが、確かに町名どおり海辺を築出て新しく出来た地域です。その詳しい年代までは不明ですが、『熱田町旧記』によれば、寛永10年(1633)、承応3年(1654)に海辺を築出した記載があり、更に七里の渡しにある常夜灯も承応3年に現在地付近へ移設されているので、1600年代には築地町はある程度の形にはなっていたと思います。 ただ、この地域を「築出」とは呼んではいなかったようで、宮の遊里があった神戸、伝馬、築出の「築出」は裁断橋より東、古くは一色と呼ばれていた地域を指しています。ですから、宮宿で一般的に「築出」という場合は、裁断橋東の築出町を指すのだと思います。 そう考えると、ベルさんがご指摘のように「つき出し」は「突き出しの鉢肴」とする方が自然なような気はします。まさに挿絵のような状況でしょうか。 ただ、和歌などには疎いのであまりはっきりとはお答えできそうにありません。もし、「突き出し」、「築出」以外にも解釈の仕方があれば、どなたかご見識の方に訂正、補足していただければ幸いです。
丁寧なご説明、痛み入ります。
この挿絵は調べれば調べるほど味のある絵ですね。 料理の始めに出る「つき出し」は関西の言葉で、関東ではこれを「お通し」といいました。 関東で「つき出し」とは、花魁の前段である新造が、禿を卒業して初めてお客を取ることをいうのだそうです。 この歌がダブル・ミーニングを持つとなれば、屏風の手前でやり手女に支度を手伝ってもらっている若い女性が新造にも見えます。 ちょっと深読みでしょうか。 また、歌の最初にある「田楽」というのが謎でして、もう少し調べてみようと思います。 名古屋市教育委員会発行の「ここに歴史が」では、この絵を”都々逸が聞こえる宿場町”と紹介していました。
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nitibotuM at 2019-09-13 16:56
ご丁寧な返信ありがとうございます。
当時の七里の渡し近辺は、今では考えられないような賑わいであったことが挿絵からもよく分かります。 このような賑わいのあった遊里ですから、ベルさんがご指摘のように「つき出し」を新造という艶っぽい解釈の仕方もありえるかと思います。 また、この『尾張名所図会』は、極めてたくさんの文献を渉猟した中から作者が適宜引用しているため、出典が簡単には分からないことがあります。 やはり、この歌についても詳しくは分かりませんが、「田楽」については、『名古屋市史』の人物編に「木芽亭田楽」が紹介されており「城西牧野村に住せり、(中略)戯作を好み、特に狂歌を善くす」とあるので、この人物のことではないかと考えます。「木芽亭田楽」は1800年前後に活躍した戯作者で、椒芽田楽、西江田楽など色々な呼び名があったようです。「木芽亭田楽」という名前もなかなか面白いので、こういった歌を詠んでいたのであろうとは想像出来るのですが、出典などは調べていないので正確なところは分かりません。もし、この「田楽」についても、どなたかご見識の方に訂正、補足していただけますと幸いです。
貴重な情報ありがとうございます!
名古屋市史人物編は随分と遠慮のない文章ですね。 いろいろ調べていて、この人物編で 田楽と、挿絵を描いた絵師の森高雅も同様に はじめて人物の息遣いや体温のようなものを感じました。 名古屋市博物館の説明文は少し格調高すぎるかな? 西尾の岩瀬文庫には田楽の著書「戯気縁起」が残っているようなので、見に行ってきます。
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nitibotuM at 2019-09-16 20:00
ご返信ありがとうございます。
この歌や挿絵に関して詳しく解説している書籍をあまり見かけませんでしたので、深く意味を考えることもなかったのですが、今回ベルさんにご指摘いただいて、奥深い意味がありそうで大変勉強になりました。ありがとうございます。 岩瀬文庫のデータベースで田楽の『戯気縁起』を確認してみましたが、面白そうな内容ですね。 また、参考までに、ご存じかもしれませんが、手頃なところで『洒落本大成』第20巻、『名古屋叢書 』 正編 第14巻にそれぞれ田楽の著作が所収されているようです。他には蓬左文庫にも蔵書があるようですね。 備忘録として残しておきますが、どなたかのご参考になれば幸いです。 では、また何か情報がありましたらよろしくお願いします。
こんにちは。 今年から名古屋高年大学の古文書クラブに所属しておりまして、この挿絵を文化祭研究テーマにしております。当ブログの主様のご助言で飛躍的に研究が進んだこと、大変感謝しております。
絵の左下、衝立の手前で出番を待つ踊り子と裕福な主客の関係を考えていて、ドガの「舞台の踊り子」を思い出しました。パリのオペラ座で踊り子が立っていて、舞台袖にタキシード姿の男性が見え隠れする有名な絵です。 「怖い絵」の著者、中野京子さんによれば、当時のバレリーナは下層階級の少女達で、タキシードの男性はパトロンであり、ドガはさりげなく巧妙に、桟敷席から好みの少女を物色する男性の視線で描いているそうです。実業家のような一面を持ち、美人画が得意なこの絵の作者・高雅と、踊り子や娼婦を多く描いたドガ。洋の西東に遠く離れた二人の画家が、同じ時期に同じテーマで描いたものとしてみても面白いと感じています。また田楽の本業が医者であることから、絵の左で女性にしがみついている剃髪の男が田楽である蓋然性もあります(当時の医者は剃髪が多かった)。滑稽味を好んだ田楽らしい、というのが私の田楽人物像です。ホントに面白い絵です。
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nitibotuM at 2019-10-08 20:14
ご返信ありがとうございます。
『尾張名所図会』に関しては全く更新できない状態ですが、少しでもお役に立てたことがあったのであればうれしい限りです。 ベルさんが1枚の挿絵から多角的に研究された考察には大変興味深く読ませていただきました。ありがとうございます。 現在は少々『尾張名所図会』から興味関心が薄れて、哲学的な関心へと移っていますが、ベルさんが「洋の西東に遠く離れた二人の画家が、同じ時期に同じテーマで描いたものとしてみても面白い」とおっしゃるように東西の芸術や思想において、それぞれの良さや相違があっても根底では通じるところがあるだろうと考えます。 今回はベルさんから有意義なお話を聞くことができました。改めてお礼申し上げます。どうぞ今後ともよろしくお願いします。 |
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