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2017年 04月 13日

四国 2泊3日の旅 その12

 道後温泉に宿泊して、翌日は朝食の前に宝厳寺へ散歩。
 
 宝厳寺は時宗の開祖である一遍の誕生地である。まず、訪れてみると真新しい本堂が目に入る。宝厳寺は2013年に火災によって諸堂や木造一遍上人立像などが焼失してしまったが、この真新しい立派な本堂がまもなく再建されたようだ。
 
 一遍といえば、歴史の教科書にも登場し、独特の布教スタイルである「踊り念仏」によって念仏信仰をひろめた時宗の開祖として有名だと思う。確かに「踊り念仏」は有名だが、実は一遍の思想も魅力的で私たち現代人にも訴えかけるものがある。
   
 どんな宗教であろうと、信者はどのようにその宗教を信仰すればよいのかという問題が出てくる。例えば、多くの神々がいる多神教では、儀式を通して信仰を確認しあうケースが多く、外見上の信仰心は問題となるが、信者の内面の信仰心までを問うという姿勢は希薄である。ところが唯一神を信仰する一神教へと宗教が向かえば向かうほど、信者自身の心の内面上の信仰心がどれだけあるかが重要となってくる。つまり、一神教では信者の内面の信仰心によって神仏からの救済の対象になるか、ならないかが決まる。
 例えば、キリスト教では「心を尽くし、精神を尽くし、思いを尽くし、力を尽くして、あなたの神である主を愛しなさい」(「マルコによる福音書」12.30)と信者へ内面の強い信仰を要請する。
 また、仏教を一神教とみるのは難しいかもしれないが、一遍の時宗と同じ、浄土系の祖師の思想を見てもやはり内面の信仰が重要になってくることが分かる。浄土真宗の親鸞は、「弥陀の本願信ずべし 本願信ずるひとはみな 摂取不捨の利益にて 無上覚をばさとるなり」と『正像末和讃』にあり、やはり内面の信仰が重要となる。
 
 このように宗教では、強い神仏からの救済に預かるためには内面の信仰が問題になるわけだが、信者の立場からいえば、この点は意外と難しく困難な問題であるといえる。内面の問題は、目に見えるわけではないので自分自身が信心深いものか、そうでないかは分からない。そうなると自分自身が救いの対象になるのか、ならないのか、という不安に陥ることになる。そういった不安に向き合って思想を形成したのが時宗の一遍だといえる。
 
  一遍の思想は浄土宗(西山派)証空の思想が母体となっているので、一遍と証空の思想はきわめて近い。証空は「いたづらに機の善悪を論じて、仏の強縁を忘るることなかれ。不信につけてもいよいよ本願を信じ、懈怠(けだい)につけてもますます大悲を仰ぐべし。」(『鎮勧用心』)と不信を想定するが、それでも信仰の重要性を説く。一遍はこの不信の問題を全面に捉える。
 

 又云、或人、浄土宗の流々の異義を尋申して、「何にか付べき」と云々。上人答ていはく、「異義まちまちなる事は、我執(がしゅう)の前の事なり。南無阿弥陀仏の名号には義なし。義によりて往生する事ならば、尤(もっとも)此尋(このたずね)は有べし。全く往生は義によらず、名号によるなり。たとい法師が勧むる名号を信じたるは往生せじと心には思うとも、念仏申さば往生すべし。いかなるえせ義を口にいふとも、心に思ふとも、名号は義によらず、心によらざる法なれば、称すれば決定(けつじょう)往生すると信じたるなり。たとへば火を物に付んに、心にはやけなとおもひ、口にはやけそといふとも、此言(このことば)にもよらず、念力にもよらず、只(ただ)火のおのれなりの徳として物をやくなり。水の物をぬらすも、是に同じ事也。然(しか)のごとく名号もおのれなりに、往生の功能をもちたれば、努々(ゆめゆめ)義にもよらず、心にもよらず、言にもよらず、唱ふれば往生するを、他力不思議の行と信ずるなり」。『播州法語集』
 

 と、一遍は往生の条件に、念仏に義(教義)は関係なく、念仏を信じる信じないの信仰も関係ないと言い切る。ただ必要なのは称名(念仏を称える)だけであるという。その状態を「南無阿弥陀仏が往生する也」とまで一遍は言っている。もはや一遍にとっては、内面の信仰心は問題ではない。むしろ信仰心さえ捨てる覚悟が必要となる。なるほど捨聖とはまさに一遍に相応しい。
 1つのことを信じ続けることの難しい時代に一遍の思想は魅力的となる。この不信心の時代にこそ一遍の思想が見直されてもよいように思う。

 宝厳寺を後にして、次は「坊ちゃん列車」に乗車する。


宝厳寺(2017年3月29日)曇り    撮影位置
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by nitibotuM | 2017-04-13 21:16 | 花鳥風月 | Comments(0)


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