2012年 06月 11日
『尾張名所図会』の円福寺 本尊 阿弥陀如来 熱田大神宮の神作で厳阿にお授けになった霊像である。脇侍の毘沙門天は竜宮から現れた。また、大黒天は踏み込みの大黒といわれ、左足を踏み出している像である。脇壇の十一面観音は泰澄和尚の真作である。 観音堂 大日如来及び三十三所の観音を安置している。 開山堂 厳阿上人の像を安置する。 鐘楼 境内にある。 鎮守社 地主権現を祀る。 亀井 本堂の北にある。厳阿上人が人を雇って井戸を掘らせた時に、更に水が湧き出ることはなかった。穿掘(せんくつ)する事、三十五日で、井の底に不思議なものが掘り出された。厳阿が井戸の中に下って見ると、亀の甲羅が地面の底にあったが、その広大さは計り知れない。厳阿はこの地が本当に蓬莱であることを知り、その井戸を封じて、亀井と名付けて山号の銘として、霊地とした。 寺宝 百韻連歌懐紙 永享四年九月十三日 普広院殿自筆。発句は厳阿、脇は義教公、第三厳阿。 短冊 厳阿自詠。 その他多数の寺宝がある。 芝居地 明暦二年(1656)当寺境内に於いて、芝居御免許があり、奥山清九郎、神岡勘弥というような役者が狂言を興行した。これが当国の芝居の始まりという。ちなみに、それより前の慶長十五年(1610)名古屋城の御造営の時、与治兵衛という者が、京都から女をたくさん連れて熱田に来て、町外れに桟敷(さじき 見物席)を設けて、勧進歌舞伎を興行した。その時、加藤清正の足軽二人が熱田へ使いにやってきたて、この芝居をムシロの囲いの隙間から覗いた。これを見つけた与治兵衛の奉公人が棒で足軽の顔を突いた。足軽はおとなしくその場所を去って、お金を払って鼠戸(ねずみど)から見物席に入っていったが、舞台に勢いよく上っていって、狂言師一人、女二人を切り倒して、さらに楽屋にいた与治兵衛までも手傷を負わせてその場を逃げ去った。与治兵衛はかろうじて命は助かったので、この事を加藤清正に訴えた。与治兵衛の訴えは当然の事で、足軽は見つけ次第、成敗するとして、女は望むだけの償いを与えるので許して欲しいと、さらに舞台の破損料、そして、与治兵衛の治療費も頂いた。女も前より優れた者を選んでくださったという話が、『続撰清正記』『尾陽雑記』などに見える。芝居の旧地はどこになるのであろう。熱田の町外れにもあったという事を書き記しておく。 円福寺の歴史的な位置 『名古屋市史』には次のようにある。 往古は洲崎の毘沙門堂と呼ばれていた。最澄が熱田神宮へ参籠の際に建立した。 織田信長、織田信忠から諸役免除の書、織田大和守逵勝(みちかつ)から禁制の札を給わる。 永正、承応の二度にわたる火災にあう。 塔頭には長光院、清浄軒、松徳院、清光院、竹光院、蓮福院、宝蔵院、竹等院、称名院、宝珠庵の十所であったが今はすべて廃している。末寺には、盛清寺(市場町)、姥堂(伝馬町)、光明寺(現在の岡崎市矢作町)の三寺がある。 『張州雑志』には次のようにある。 十一面観音、是は行基の作にて昔、沢観音とて熱田四観音の一なりし荒廃の後、今の妙安寺建立の時、別に七観音を安置し此の像は円福寺にあづけ置しまゝ、爰にすへまいらす。(『尾張名所図会』に「泰澄和尚の真作」とある十一面観音のことか) 現在の円福寺 円福寺の位置 『尾張名所図会』と『張州雑志』は、円福寺についてかなり詳しく記されている印象を受ける。もちろん当寺は、足利氏ゆかりの由緒ある寺であるので当然といえば当然であり、現在でも格式ある寺院として『尾張名所図会』にある連歌の懐紙などを残すが、多くの寺宝は戦災によって焼失した。また、当寺は国道沿いにあり、戦後の都市開発の中で、『尾張名所図会』にあるような大伽藍は姿を消した。
by nitibotuM
| 2012-06-11 18:39
| 尾張名所図会
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